レンジフードを回すと、家の中はどうなる?
ドイツinVENTer社に学ぶ、住まいと換気の基礎知識 Vol.12
前回の最後にCO₂が高い時は
レンジフード回したら最強や!
換気量増やしたろ!
……
と書きました。
CO2は出ていくけれど、その分の空気、どこから入ってくるん?
今回はそんな話です。
例えば、
30坪くらいのお家。
室内容積を240㎥とします。
日本の0.5回換気なら、
240㎥ × 0.5回 = 120㎥/h
くらいの換気量になります。
レンジフードを強運転でON!480㎥/h!
24時間換気の4倍(笑)
480㎥/hも外へ空気を出したら出した分だけ、
どこかから外の空気が入ってきます。
給気口、窓や玄関の隙間、いろんなところから、
空気は家の中へ入ろうとします。
でも、高気密住宅はそもそも隙間が少ない。
その状態で大量に排気すると、
家の中の気圧が外より低くなります。
これが、負圧です。
レンジフードを回したら、玄関ドアが重っ!!!
窓の隙間から、ヒューーーー!
そんなことが起きるのも、
家の中が負圧になっているからです。
昔の隙間の多い家なら、良くも悪くも
あっちからスースー。こっちからスースー。
勝手に外気が入ってきました。
でも、高気密住宅ではそれが少ない。
逆に、空気をどこから入れて、どこから出すのかを自分たちで決められる。
これが高気密住宅の良いところです。
だからこそ、
レンジフードみたいに大量の空気を出す設備を付けるなら、
「その空気、どこから入れるん?」
まで考えないといけません。
そして、
熱交換換気を使っている家では、
もう一つ知っておいてほしいことがあります。
レンジフードを回したら、熱交換率はどうなる?
例えば、
24時間換気が120㎥/h。
熱交換率80%の熱交換換気を使っているとします。
普段なら、
120㎥/hの外気を入れながら、
捨てる室内空気から熱を回収して、
温度差の80%くらいをリサイクルしている。
いい感じです。
ところが、
料理や換気のためにレンジフード480㎥/h!
ブオーーーー!
すると、家の中は負圧になります。
ここで、
「レンジフードで出した480㎥/hは、全部隙間から入ってくる」
というほど単純ではありません。
負圧になると、
熱交換換気の給気側からも、
普段より空気が引っ張られて入ってくることがあります。
逆に、
排気側は外へ出しにくくなることもあります。
つまり、
普段は、
給気120。
排気120。
いい感じにバランスしていた熱交換換気が、
レンジフードを回した途端、
給気と排気のバランスが崩れる可能性がある。
ということです。
「じゃあ、熱交換器を通って入ってくるならいいやん!」
と思いますよね。
でも、
そうでもありません。
熱交換って、
外から入ってくる空気だけではできません。
その空気へ熱を渡してくれる、
室内から出ていく空気が必要です。
例えば、
外から200㎥/h入ってきているのに、
熱を持った室内空気が100㎥/hしか熱交換器を通らなかったら?
外気200に対して、
熱を渡してくれる空気は100。
**熱交換器は通ってる。でも、交換する熱が足りない!**
ということになります。
特に、交互給排型の熱交換換気では、
排気するときに熱交換素子へ熱を貯め、
次に給気するとき、
その熱を外気へ返しています。負圧によって、
排気するときの風量が減って、
給気するときの風量が増えたら?
貯められる熱は少ない。
でも、次に入ってくる外気は多い。
そりゃ、普段と同じようには熱交換できません。
さらに、換気設備から入りきらない空気は、
普通の給気口や建物の隙間などから、
熱交換せずに入ってきます。
つまり、大風量のレンジフードを回すと、
① 熱交換換気そのものの給排気バランスが崩れる。
② 熱交換を通らない外気も増える。
この両方が起こり得るんですね。
なので、カタログに熱交換率80%!と書いてあっても、
レンジフードを回している間も、
家全体で80%の熱を回収できている。
という意味ではありません。
じゃあ、本当の熱交換率って何%?
すでにお気づきかもしれませんが、
住宅の熱交換率って、カタログの数字だけ見てても、
実際の暮らしとは少し違いますね。
僕らは24時間ずっと、
熱交換換気だけで生活しているわけじゃありません。
朝ごはん。
レンジフードON。
夜ごはん。
またレンジフードON。
お風呂に入ったら、
浴室からも空気を出す。
トイレの換気扇を使う家もある。
その空気が全部、
熱交換されているとは限りません。
だったら、
「一日トータルで見たら、この家って実際どれくらい熱を回収できてるん?」
こっちを考えた方が、
暮らしに近いと思いません?
例えば、
先ほどと同じ家。
24時間換気が、
120㎥/h。
熱交換率80%。
一日では、
120 × 24 = 2,880㎥
の空気を熱交換換気しています。
ここに、
例えば、
レンジフード480㎥/hを、
朝30分。
夜1時間。
合計1.5時間使ったとします。
480 × 1.5 = 720㎥
さらに、
24時間換気とは別に、
浴室などから追加で、
100㎥/hを2時間排気したとします。
100 × 2 = 200㎥
かなり単純化すると、
一日に外と入れ替わる空気は、
2,880 + 720 + 200 =
3,800㎥
そのうち、
熱交換率80%で回収しているのが、
2,880㎥分だとすると、
2,880 × 0.8 ÷ 3,800 =
約 61%
になります。
え?
熱交換率80%の換気設備を付けたのに、
暮らし全体で見たら60%くらい?
となりますよね。
もちろん、
これはものすごく単純化した計算です。
実際には、
レンジフードを回したときに、
熱交換換気側からどれくらい余分に外気が入るのか。
排気側の風量がどう変わるのか。
どこから漏気するのか。
給気口がどれくらい開いているのか。
季節。
風。
建物の気密性能。
いろんな条件で変わります。
なので、
これは正式な性能指標ではありません。
でも、
僕はこういう、
「暮らしの実効熱回収率」
みたいな考え方があってもいいと思うんです。
※そんな正式名称の指標はありません。僕が勝手にそう呼んでます(笑)
だって、
毎日3時間しっかり料理する家と、
ほとんどレンジフードを使わない家。
同じ熱交換率80%の設備が付いていても、
実際に一年間で捨てる熱の量は、
同じではないですよね。
お風呂も同じ。
そして夏は、
もっと面白い。
レンジフードで外気を大量に入れるということは、
暑さだけじゃなく、
湿気も一緒に入れる
ということです。
せっかく全熱交換換気で、
外の湿気を入れすぎないようにしているのに、
その横で大量の外気を直接入れたら、
エアコンは、
温度だけじゃなく湿気まで処理しないといけません。
なので、
レンジフードって、
単なる料理の臭いを出す機械じゃなくて、
家全体の換気と冷暖房に結構大きな影響を与える設備
なんですね。
だから、
必要もないのに、
ずーーーーっとレンジフードを回しっぱなし。
これは、熱交換換気を使っている家では、
だいぶ宝の持ち腐れ。
もちろん、
料理中の臭いなど必要なものは、
ちゃんと処理しないといけません。
なので、
「レンジフードを使わない方が省エネ!」
という話ではありません。
必要なときには、ちゃんと使う。
でも、必要以上に排気し続けない。
そして、もっと大事なのは、
大量に排気するとき、家全体の空気がどう動くのかまで考える。
ということだと思います。
※浴室換気については、浴室換気扇そのものが24時間換気システムになっている住宅もあります。その場合は、単純に「止めればいい」という話ではありません。
さて。
こういうのがあります。同時給排型レンジフード。
名前だけ聞いたら、
めちゃくちゃ良さそうです。
排気する。同時に給気するレンジフード!
これで解決!
……
本当に?
実は、「同時給排」と書いてあっても、
給気量と排気量が同じとは限りません。
給気側にファンがあるもの。
ないもの。
それって、良いの?悪いの?
家全体の換気には、本当に影響しないの?
さらに、もう一つ。
そもそも料理の空気を外へ捨てずに、室内でキレイにして戻したら?
という考え方もあります。
次回
「レンジフード② 同時給排なら解決? 室内循環という選択肢」
について考えてみたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました!
改正でした。
※本文中の熱交換率や一日平均の計算は、換気と熱回収の考え方を分かりやすくするために単純化した例です。実際の熱回収効果は、換気設備の特性、給排気風量、建物の気密性能、給気経路、外気条件、設備の運転時間などによって変わります。
※大風量排気を行うと、熱交換換気設備を含む家全体の給排気バランスに影響する場合があります。また、燃焼機器を使用する住宅では、室内外差圧や給気不足について特に注意が必要です。
※本記事は、ドイツinVENTer社の技術情報および国内の換気・住宅設備に関する技術情報を参考に、日本の住宅事情に合わせて編集・解説しています。