なぜ反転は70秒ごとなの?

ドイツinVENTer社に学ぶ、住まいと換気の基礎知識 Vol.17

前回は、

「なんでアルミじゃなく、セラミックなの?」

という話をしました。

室内の暖かい空気を外へ出すとき、セラミックに熱を貯める。

そしてファンを反転させて、次に入ってくる外気へその熱を返す。

これがヴェントサンの基本的な仕組みです。

では次の疑問。

ヴェントサンは、

排気→給気→排気→給気。

と、ファンの向きを変えながら運転します。

その切り替え時間は、70秒。

では、

なぜ反転は70秒ごとなの?

50秒じゃダメ?5分じゃダメ?

今回は、この「70秒」について考えてみたいと思います。

ヴェントサンの熱交換運転では、70秒ごとにファンの回転方向を反転します。

60秒だったり、90秒だったりするわけではありません。

70秒です。

じゃあ、なんで70秒なん?……

これが意外と、公式には詳しく書いてありません(笑)

でも「70秒ごとに反転」という仕様は明確で、蓄熱式の仕組みを考えると、

なぜ一定時間ごとに反転する必要があるのかは分かります。

セラミックにも、貯められる熱には限界がある

例えば冬。

室内20℃。

外0℃。

まず排気します。

20℃の暖かい室内空気が、冷たいセラミックを通る。

すると、室内空気の熱がセラミックへ移っていきます。

最初はセラミックが冷たいので、熱をどんどん受け取れます。

でも、そのまま排気を続けたらどうなる?

セラミックも、だんだん暖かくなってきます。

すると、

室内空気との温度差が小さくなる。

つまり、

だんだん熱を受け取りにくくなる。

そこで、

反転!

今度は外から0℃の空気が入ってきます。

でもセラミックには、さっきの排気で熱が貯まっている。

冷たい外気がそのセラミックを通ることで、暖められて室内へ入ってきます。

いい感じですね。

でも、今度は給気をずっと続けたら?

セラミックは外気へどんどん熱を渡して、だんだん冷えていきます。

すると、

今度は返せる熱が少なくなってくる。

そこで、

また反転。

これを繰り返しています。

だったら、5分ごとでもいいんじゃない?

例えば、5分排気。5分給気。

にしたらどうでしょう?

排気を始めた直後は、セラミックへよく熱が移ります。

でも時間が経つにつれて、セラミックが室温に近づいていく。

すると後半は、熱を受け取る力がだんだん弱くなります。

給気も同じです。

反転した直後は、セラミックに熱がたくさん残っている。

なので外気をしっかり暖められる。

でも5分も給気を続けたら、後半はセラミックがかなり冷えてきます。

すると、入ってくる空気も外気温に近づいていく。

つまり、一方向に長く流せばいいわけではありません。

セラミックがしっかり熱を受け取れるうちに反転する。

そして、しっかり熱を返せるうちにまた反転する。

この繰り返しが大事なんですね。

では逆に短かったら?冷える前に反転して効率が良くなるよ!

……という話でもありません(笑)

ファンは反転するたびに、一度回転を落として逆方向へ回ります。

空気の流れも、そのたびに切り替わります。

そして何より、セラミックが空気から熱を受け取るには、ある程度の時間が必要です。

10秒しか排気しなかったら、セラミック全体を十分に使えていないかもしれません。

つまり反転時間は、

長すぎてもダメ。

短すぎてもダメ。

蓄熱体と空気のちょうどいいところを探す必要がある。

ということになります。

風量も関係します

ここでVol.6、

「最大熱交換率の落とし穴」

につながります。

同じ70秒でも、少ない風量で運転するのと、大きな風量で運転するのでは違います。

例えば70秒間に、少ない量の空気を通す。

セラミックは、その空気とゆっくり熱をやり取りできます。

でも風量を増やすと、同じ70秒の間にたくさんの空気が通ります。

セラミックは、その大量の空気から熱を受け取ったり、逆に熱を渡したりしないといけない。

だから一般的に、風量が大きくなるほど、熱交換率は下がりやすくなる。

つまり熱交換率って、「セラミックが何%の性能なの?」だけでは決まりません。

セラミックの大きさ、ハニカムの形、空気の速さ、風量。

そして、70秒という反転時間。

全部セットで決まります。

そして実際に、その70秒周期で現在の熱交換性能が測定されています。

なので僕は、

「70秒という数字だけに意味がある」

というより、

セラミック・ファン・風量・70秒を一つのシステムとして設計している

と考える方が正しいと思っています。

70秒ごとに、ずっと反転して大丈夫なの?

さて。

ここで次の疑問が出てきます。

70秒ごとに反転。

1時間なら約51回。

1日なら、約1,200回。

1年間なら……約45万回。めっちゃ反転するやん!(笑)

普通の換気扇って、基本的には同じ方向へ回り続けます。

でもヴェントサンは、

正転→反転→正転→反転。これを何年も繰り返します。

だったら、普通のファンを使っていて大丈夫なん?

となりますよね。

なのでinVENTerは、このPush-Pull運転のためにファンそのものまで開発しました。

それが、Xenionファン。

次回は、「なんでファンまで自分たちで作ったの?」です。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

改正でした。

 

※本記事は、ドイツinVENTer社の公開技術情報を参考に、日本向けに編集・解説しています。