なんで2台1組なの?
ドイツinVENTer社に学ぶ、住まいと換気の基礎知識 Vol.20
前回まで、ヴェントサン一台の中をずいぶん細かく見てきました。
セラミックに熱を貯める。
70秒ごとにファンを反転する。
そのためにキセニオンファンまで自社開発して、温度や風圧にも対応する。
では今回は、一台から少し離れてみます。
ヴェントサンは基本的に、
2台1組。
片方が給気しているとき、もう片方が排気する。
70秒後には、二台とも反対になります。
でも一台でも、
給気→排気→給気→排気。とやってるんだから、
一台だけでも換気できるんじゃないの?
今回はそんな話です。
一台だけだと、給気か排気のどちらかしかしていない
例えばヴェントサンを一台だけ動かします。
まず70秒、排気。室内の空気を外へ出します。
当然ですが、その間この換気扇からは給気していません。
70秒後に反転。今度は給気します。
外から新鮮な空気が入ってきますが、その間この換気扇からは排気していません。
つまり一台だけで見ると、
排気だけの70秒。
給気だけの70秒。
を繰り返しているんですね。
そこで二台を組み合わせます。
Aが給気しているとき、Bは排気。
70秒後、Aが排気、Bが給気。
こうすると住宅全体では、
給気と排気を同時に行うことができます。
inVENTer自身も、室内の圧力を安定させるためには給気量と排気量を合わせる必要があり、そのため少なくとも2台をPush-Pullでペア運転すると説明しています。
ここで、ちょっとややこしい「風量」と「換気量」
ヴェントサンのカタログを見ると、
最大の排気風量は58㎥/h。
でも熱交換運転時の換気量を見ると、
29㎥/h。
半分です。
なんで?
ヴェントサン一台は、ずっと排気しているわけではないからです。
70秒排気したら、次の70秒は給気。
つまり一台で見ると、排気している時間は半分。
inVENTerの換気計画でも、交互運転では実際に排気を行うのが運転時間の半分なので、機器の風量を半分にして換気計算すると明記されています。
なので最大運転なら、
58÷2=29㎥/h。
これが一台あたりの熱交換運転時の換気量です。
じゃあ2台なら?
一台29㎥/h。
二台なら、
29×2=58㎥/h。
となります。
実際の動きで見ると分かりやすい。
ある70秒では、
A:58㎥/h 給気
B:58㎥/h 排気
次の70秒では、
A:58㎥/h 排気
B:58㎥/h 給気
となる。
住宅全体として見れば、
58㎥/hの給気と58㎥/hの排気。
これが続いているわけです。
ここで、「58給気+58排気だから合わせて116㎥/h!」にはできないです。
換気量としては、外から58㎥/h入ってきて、同じ58㎥/hが外へ出ていく。
なので、換気量は58㎥/h。ということです。
反転するとき、ファンの回転は弱くなるけど?
ここで気になった方もいらっしゃるかも。
キセニオンは70秒経った瞬間に、58㎥/h!反対!また58㎥/h!
と瞬間的に切り替わっているわけではありません。
反転するときには回転が変化する時間があります。
だったら、
29㎥/hから、さらに反転時のロスを引かなくていいの?
と思いますよね。
この点について、inVENTerの換気計画では、熱交換運転時にはメーカーが示す半分の風量をそのまま計算に使用しています。
またTÜV SÜDの試験データを見ると、最大運転点で試験から求めた平均風量は、
排気側59.3㎥/h。
給気側58.2㎥/h。
両者平均58.7㎥/h。
と測定されています。
なので換気計画するときに、こちらで勝手に補正する必要はありません。
熱交換運転時の換気量として示している29㎥/hを使う。
これが基本になります。
※反転時の風量評価方法自体は欧州規格でも見直しが行われており、細かな試験方法まで入るとかなり深い話になります。ここでは製品の換気計画に使う公称値について説明しています。
「2台1組」の本当の意味
一台でもセラミックへの蓄熱と放熱はできます。
二台にする大きな理由は、
一台が給気している間に、もう一台を排気させて、住宅全体の給気と排気のバランスをとるためです。
inVENTerも、リバーシング式の分散型換気ではバランスした風量が必要で、通常はペア運転によってそれを確保すると説明しています。
だからヴェントサンって、「壁に換気扇を何台か付ける設備」じゃないんですよね。
複数の換気扇を組み合わせて、一つの換気システムを作っている。
という方が正しい。
だから熱交換換気システム「ヴェントサン」なのです。
OK、二台で一組なのは分かった。それで家に何台付ければいい?
リビングに二台?寝室にも二台?それとも家全体で考える?
次回は、
「ヴェントサン、どこに何台つければいい?」
について考えてみたいと思います。
今回もお読みいただき、ありがとうございました!
改正でした。