寒い日・風の強い日、ヴェントサンはどう動く?
ドイツinVENTer社に学ぶ、住まいと換気の基礎知識 Vol.19
前回は、ヴェントサンのXenion(キセニオン)ファンについて書きました。
70秒ごとに給気と排気を反転する。しかも、その切り替えをできるだけ静かに行う。
そのためにinVENTerは、ファンまで自分たちで開発しました。
でも、このファンはただ反転しているだけではありません。
ヴェントサンは外壁に取り付ける換気設備なので、当然ですが外の環境をモロに受けます。
真冬なら、外は氷点下。
風の強い日なら、外壁にはかなりの風圧がかかります。
そんなときにも
「設定風量○○㎥/h!はい!いつも通り回っときます!」
ならいいんですけど、そういう訳に行かないこともあります。
なので実はキセニオンには、こういう外の変化に対応する仕組みが入っています。
冷たい空気が入ってきたら?
まず冬。例えば室内20℃、外気0℃とします。
排気するとき、暖かい室内空気の熱をセラミックに貯める。
70秒後に反転して、今度は外の冷たい空気が入ってくる。
その外気がセラミックを通ることで暖められて室内へ入ってくる。
ここまでは以前書いた通りです。
でも、ものすごく寒い日だったら?
あるいは大きな風量で運転していたら?
セラミックに貯めた熱をどんどん使っていくので、給気温度も下がってきます。
そこでキセニオンには、温度を監視する機能があります。
入って来る温度が5℃を下回ると、通常の交互運転から自動的に一定時間、
排気運転へ切り替わり、セラミック蓄熱体をもう一度暖めます。
つまり、
「セラミック、ちょっと冷えすぎたぞ!」
→ 一度暖め直そう。
と、運転そのものを変えるわけです。
「寒いなら給気を止めるのは分かるけど、なんで排気するの?」
答えは、セラミックを暖め直したいから。
暖かい室内空気を外へ出せば、その途中でセラミックへもう一度熱を貯めることができます。
いわば、セラミックの再充電。
その後、再び外気を取り入れれば、暖め直したセラミックから熱を受け取ることができます。
電気ヒーターを使って、外気を直接暖めているわけではありません。
室内から捨てる空気の熱を使って、セラミックをもう一度暖める。
ヴェントサンらしい方法ですよね。
もちろん、この機能で「真冬でも絶対に冷たい給気が入ってこない!」
という意味ではなくて、冷たい給気が入り続けて室内が冷えることを抑えるための制御です。
ダクト式の熱交換換気では、似た考え方があります
こういう低温時の制御。
実は熱交換換気全体で見ると、珍しい考え方ではありません。
日本で販売されているダクト式の熱交換換気でも、外気温が低くなると給気ファンを止めたり間欠運転にしたりして、排気側を動かし続けることで、熱交換器の凍結や冷えすぎを防ぐ製品があります。
電気ヒーターで外気をあらかじめ暖めてから熱交換器へ入れる方式もあります。
つまり、
「外がめちゃくちゃ寒いときまで、いつも通り外気を入れ続けない」
というのは、熱交換換気では大事な考え方なんですね。
ただ、ヴェントサンはそれを壁の中に納まる小さな分散型換気でもやっている。
大きなダクト式換気設備だけの話ではなく、キセニオンファンが温度を監視して、自分で運転を変えてセラミックを暖め直す。
小さくしても、ちゃんと制御する。
ここはキセニオンの特徴の一つだと思います。
では、風が強い日は?
もう一つあります。
風です。
外壁と直接つながっているということは、風の強い日は屋外側から圧力を受けます。
例えば給気しているとき、外から強い風が押してくれば、いつもより空気が入りやすくなる。
逆に排気しているときに向かい風を受ければ、空気を外へ出しにくくなる。
つまり同じ回転数でファンを回していても、外の風によって実際の風量が変わってしまう可能性がある。
これ、熱交換換気では結構大事な話です。
Vol.17でも書いたように、セラミックの熱交換性能はどれくらいの空気を通すかとも関係しています。
風が吹くたびに、
今日は20㎥/h。今は30㎥/h。風向きが変わって15㎥/h。
となったら困ります。
そこでキセニオンには、風圧安定化機能があります。
inVENTerでは「Druckstabilisator」と呼ばれている機能で、外から風圧を受けてもファンの運転を制御して、風量の変化をできるだけ抑えます。
「風圧センサー」ではなく「風圧安定化機能」
ここは少し細かい話ですが、僕たちエディフィスでも以前は「風圧センサー」と説明していました。
意味としては大きく外していないのですが、inVENTerの表現に合わせるなら、「風圧安定化機能」とした方が正確です。
外からの圧力変化に対してモーターの回転を制御し、運転を安定させる仕組みです。
イメージとしては、
外が強風!
→ 外から圧力を受ける
→ ファン側で運転を補正
→ 風量の変化を抑える
という感じです。
ヴェントサンの場合は、風量が変われば熱交換にも関係する。
さらに2台以上を組み合わせて給気と排気を行うので、換気のバランスにも関係してきます。
だから、外の風は無視できない。
壁付けだからこそ、外の変化を見る
こうして見ると、
温度監視と風圧安定化。
この2つって、どちらもヴェントサンが外壁と直接つながっているからこそ必要になった機能なんですよね。
外が寒ければ、その影響を受ける。
風が強ければ、その影響も受ける。
だったら、
外の環境が変わっても、できるだけ換気を安定させよう。
そのために、温度を見る。
運転サイクルを変える。
風圧の影響を補正する。
キセニオンは換気を安定させるための制御装置でもあります。
なんで2台1組
一台で給気と排気を交互にしているんだから、一台だけでも換気できそうな気がしますよね。
ここには住宅全体の給気と排気のバランスが関係してきます。
次回は、
「なんで2台1組なのか?」
について書いてみたいと思います。
今回もお読みいただき、ありがとうございました!
改正でした。