なんでアルミじゃなく、セラミックなの?

ドイツinVENTer社に学ぶ、住まいと換気の基礎知識 Vol.16

前回は、

「ヴェントサンの原点。inVENTerは、なんで生まれたの?」

という話をしました。

1999年、inVENTerが新しい換気設備を開発するときに目を付けたのが、

セラミック。今回はその話です。

まず知っておいてほしいのはPush-Pull(交互給排気)の考え方そのものは、

inVENTer以前から存在していたということです。

1980年代にはすでに、この仕組みに関する技術がありました。

そして1990年代初めには、

アルミ製の蓄熱体を使った分散型熱交換換気

もドイツで販売されていました。

つまり、

Push-Pullもあって蓄熱式もあって分散型もあった。

ではinVENTerは、何を変えたの?

蓄熱体を、アルミからセラミックに変えた。

ここが大きなポイントです。

アルミって、めっちゃ熱を伝える

アルミは熱をよく伝える材料です。

鍋にも使いますよね。

熱交換器として考えると、

「めっちゃええやん!」

と思います。

実際、アルミは今でもいろいろな熱交換器に使われています。

でも、

熱を交換する

のと、

熱を一度貯める

のは、少し違います。

Push-Pull型では、排気している間に蓄熱体へ熱を貯めます。

そしてファンを反転。

次に入ってくる外気へ、その熱を返します。

つまり必要なのは、

熱を受け取る。
いったん貯める。
次の空気へ返す。

という動きです。

ここでアルミの、

熱をめちゃくちゃよく伝える

という特徴が、必ずしも良いことだけではなくなってきます。

熱は、逃げようとする

例えば、蓄熱体の室内側が暖かくなったとします。

アルミは熱をよく伝えるので、その熱は蓄熱体の中を移動します。

暖かい側から、冷たい側へ。

つまり、

せっかく貯めた熱が、蓄熱体の中を伝わって移動してしまう。

実はinVENTer以前の蓄熱式換気でも、この問題は認識されていました。

当時の技術を見ると、アルミ蓄熱体の中で熱が移動しすぎないように、

熱の伝わり方を抑える工夫までされています。

これ、面白くないですか?

熱交換器だから、

「熱をよく伝える材料が一番!」

と思いそうですが、蓄熱式では、

伝えればいいだけじゃない。
ちゃんと貯めておかないといけない。

ここがポイントです。

そこで見つけたのが、ごみ焼却設備

ハニカム状のセラミック。蜂の巣みたいに、小さな穴がたくさん開いている材料です。

もともと住宅換気のために作られたものではありません。

inVENTerの資料によると、当時はごみ焼却設備などで使われていたセラミックハニカムに着目したそうです。

こうした高温設備では、熱いガスの熱をセラミックに一度貯め、その熱を次に入ってくる

低温のガスの予熱に利用する「蓄熱・再生」という考え方があります。

つまり、

熱を受け取る。
いったん貯める。
次の空気へ返す。

……

やってること、ヴェントサンと一緒やん!(笑)

もちろん、ごみ焼却設備では扱う温度も設備の大きさも全然違います。

でも、

熱を一度セラミックに貯めて、あとで再利用する

という考え方は同じです。

工場や焼却設備で使われていた熱のリサイクル技術を、住宅の換気へ持ってきた。

僕は、ここがinVENTerのすごく面白いところだと思います。

なんでハニカムなの?

そして、

セラミックなら何でもいいわけではありません。

ポイントは、

ハニカム構造。

蜂の巣みたいに、小さな穴が大量に開いています。

空気は、その細い穴の中を通ります。

穴がたくさんあるということは、小さな体積でも空気とセラミックが触れる面積を大きくできる。

しかも、空気はちゃんと通れる。

その間に、空気の熱をセラミックへ渡す。

反転したら、今度はセラミックから空気へ熱を戻す。

つまり、

空気を通したい。
でも、いっぱい接触させたい。
そして、熱を貯めたい。

この3つを、小さな筒の中でやらないといけません。

ハニカム構造は、そのためにかなり都合が良かったんですね。

じゃあ、アルミはダメなの?

全然そんなことありません。

アルミ蓄熱体を使ったPush-Pull型換気は、現在でもあります。

高い熱回収性能を持った製品もあります。

つまり、セラミックだから高性能。アルミだから低性能。

そんな単純な話ではありません。

システム全体で性能は決まります。

でもinVENTerは1999年、

「今あるアルミ蓄熱体を、もっと良くできないか?」

と考えた。

そこで住宅業界の中だけを探すのではなく、

ごみ焼却設備など、まったく別の分野で使われていたセラミックハニカムに目を付けたわけです。

 

さて次回。

セラミックに熱を貯めるのは分かった。

では、

なんでヴェントサンは約70秒ごとに、

給気。

排気。

給気。

排気。

と反転しているのでしょう?

10秒じゃダメ?

5分じゃダメ?

ここにも、蓄熱体と風量の関係があります。

次回は、

「なんで約70秒ごとに反転するの?」

について考えてみたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました!

改正でした。

※本記事は、ドイツinVENTer社の公開資料および蓄熱技術に関する公開技術情報を参考に、日本向けに編集・解説しています。