日本はなぜ「0.5回換気」なの?
ドイツinVENTer社に学ぶ、住まいと換気の基礎知識 Vol.10
日本の住宅では、
「24時間換気で0.5回換気してください」
と決まっています。
住宅業界にいると、
当たり前すぎる数字です。
でも……
なんで0.5回なん?
そもそも、
この数字ってどうやって決まったんでしょう。
まず、0.5回換気とは、
1時間に家の空気の半分に相当する量を換気するという意味です。
この0.5回という数字。
人間が呼吸するときに必要な空気量を計算したら、
0.5回になったのでしょうか?
そうではなくシックハウス対策です。
ホルムアルデヒドを発散する建材の使用を制限すると同時に、
住宅には原則として0.5回/h以上の換気能力を持つ機械換気設備を設置することになりました。
ホルムアルデヒドは合板や接着剤、家具などから空気中に出てくる化学物質です。
濃度が高くなると、目や鼻、喉が刺激されたり、
体調不良の原因になったりすることがあります。
住宅の気密性が高くなっていく中で、
建材や家具などから出た化学物質が室内に溜まる
「シックハウス」が問題になったんですね。
そこで、
①ホルムアルデヒドが出にくい建材を使う。
②室内に出てきたものは換気して薄める。
という二段構えの対策が作られました。
ちなみに、家具は、家ができた後に買ったりしますので、
建築基準法だけでは縛れません。
だから国土交通省も、ホルムアルデヒド発散建材を使わなくても、
家具などから発生する可能性があるので、換気設備が必要としています。
では、
なんで0.5回なの?
と調べてみたんですが、これがハッキリしません。
もともと住宅の一般的な常時換気量として使われていた0.5回/hを、
2003年のシックハウス対策でも最低換気量として採用した。
そして、その0.5回を前提に上の①ホルムアルデヒド発散建材の使用量を計算した。
っぽいです(笑)
少なくとも、ホルムアルデヒドの量を計算したら0.5になった、というわけではありません。
これ、
結構重要だと思いませんか?
ということは、
「0.5回換気している=人にとって最適な換気量」
という意味ではないんですね。
では、
外国はどうやって必要換気量を決めているんでしょう?
このコラムの本家、
まずはドイツ!
ドイツでは、
住宅換気の代表的な規格として
DIN 1946-6
があります。
こちらは日本のように、
「家の容積×0.5!」
だけではありません。
住戸の床面積や、
キッチン・浴室・トイレなど排気する部屋の数や用途などから、
住宅全体の必要換気量を考えます。
さらに、
人がいる部屋についても必要な空気量を考えます。
DINの公式FAQでは、
参照する欧州規格の目安として、
1人あたり25~36㎥/h、
寝室では最低15㎥/h・人
という値も示されています。
つまり、
夫婦2人で寝る寝室なら、
最低30㎥/h。
家全体で何㎥換気している?
だけではなく、
「その部屋に何人いるの?」
まで考えるんですね。
では、
アメリカ!
アメリカにも、
「住宅は一律0.5回!」
という全国共通の決め方はありません。
代表的なのが、
ASHRAE Standard 62.2
という住宅の換気・室内空気質に関する規格です。
現在はASHRAE 62.2-2025。
住宅全体の換気だけではなく、
キッチンなどの局所排気や、
室内の汚染源対策まで含めて、
住宅の空気環境を考える規格になっています。
そして必要換気量は、
単純な「1時間に家の空気を何回交換するか」だけではなく、
家の床面積と想定される居住人数
を考える仕組みです。
過去からのASHRAE 62.2では、
寝室数から標準的な居住人数を想定し、
実際の人数が多ければ必要換気量を増やす、
という考え方が採用されています。
つまり、
同じ大きさの家でも、
1人で住む家と、
5人で住む家では、
必要な換気量が変わる。
これも日本とはかなり考え方が違います。
そして、
特殊で面白いのが、
フランス!
フランスは、
日本ともドイツともアメリカともまた考え方が違います。
基本的な考え方は、
リビングや寝室などから空気を入れて、
キッチン、浴室、トイレなど、
湿気やニオイが発生する場所から排気する。
そして、
「家の空気を0.5回交換しましょう」
ではなく、
それぞれの場所から何㎥/h排気するか
を決めています。
例えばキッチンでは、
住宅の主居室数によって、
75㎥/h。90㎥/h。105㎥/h。120㎥/h。135㎥/h。
というように必要な排気量が変わります。
浴室やトイレにも、
それぞれ必要な排気量が定められています。
なんか全然違いますよね。
日本は、
家の容積から0.5回。
ドイツは、
家の広さ+部屋の用途+人。
アメリカは、
家の広さ+住む人。
フランスは、
キッチンや浴室、トイレなど、汚れや湿気が出る場所から何㎥排気する?
同じ、
「住宅を換気する」
という話なのに、
国によって必要換気量の決め方が全然違うんです。
どの国が正しい!
という話ではありません。
そもそも、
換気にはいろんな目的があります。
ホルムアルデヒドを薄めたい。
CO₂を排出したい。
湿気を排出したい。
料理のニオイを出したい。
建物を湿気から守りたい。
何を外へ出したいのかによって、必要な換気量も変わる。
ということなんですね。
日本の0.5回換気も、
シックハウス対策として作られた大切な基準です。
でも、
0.5回換気していれば、どんな家でも、何人住んでいても、どの部屋でも完璧!
という数字ではありません。
例えば、
家全体ではちゃんと0.5回換気している。
でも、
夫婦2人で寝ている寝室に、
ほとんど新鮮な空気が届いていなかったら?
家全体の数字は合っていても、
その寝室では換気が足りないかもしれません。
じゃあ、
自分がいる部屋で、
本当に換気が足りているかどうか、
どうやったら分かるんでしょう?
空気は見えません。
でも、
一つヒントになる数字があります。
CO₂です。
次回は、
「CO₂、測ってみたら?」
まずは今を知ろうってお話です。
お読みいただき、ありがとうございました!
改正でした。
※本記事では各国の住宅換気制度・規格について、一般の方向けに概要を簡略化して紹介しています。ドイツのDIN 1946-6および米国のASHRAE 62.2は法令そのものではなく規格です。また、実際の適用条件や必要換気量は、建物・地域・換気方式等によって異なります。
※本記事は、ドイツinVENTer社の技術情報、国土交通省、DIN、ASHRAE、フランス政府法令データベース等の情報を参考に、日本の住宅事情に合わせて編集・解説しています。