全熱交換効率の「全」て何?
ドイツinVENTer社に学ぶ、住まいと換気の基礎知識 Vol.8
前回は、
「熱交換換気は湿度もリサイクルできる?」
という話をしました。
温度だけじゃなく、
湿度もリサイクルできる。
夏は外から入ってくる湿気を減らして、
冬は室内から出ていく湿気を減らす。
そして最後に、
温度80%。
湿度60%。
じゃあ、
全熱は何%?
と書きました。
今回はその答えです。
まず、
「全熱交換効率」
って名前が難しい!
全熱?
全部の熱?
いったい何が全部なんでしょう。
実は空気が持っている熱は、
大きく2つに分けて考えることができます。
一つ目が、
顕熱(けんねつ)
です。
顕微鏡の顕です。はっきりするという意味。
顕微鏡は小さいものをはっきりさせる鏡ってこと。
なので「はっきりした熱=温度 に関係する熱」
です。
空気を20℃から25℃に暖めた。
35℃の空気を28℃まで冷ました。
こういう、
温度計で変化が分かる熱です。
だから、
温度交換効率は、顕熱交換効率とも言って、
「顕熱のリサイクル率」
と考えることができます。
そしてもう一つが、
潜熱(せんねつ)
です。
顕熱の逆で、隠れてる潜ってるってこと。
これは簡単に言うと、
「湿気に関係する熱」
です。
水は、
液体の水から水蒸気になったり、
水蒸気から水に戻ったりするときに、
たくさんのエネルギーが動きます。
見た目の温度だけでは分かりにくいので、
「潜んでいる熱」=潜熱。
つまり、
顕熱=温度に関係する熱
潜熱=湿気に関係する熱
です。
そして、
この2つを合わせたものが、
全熱
です。
全熱交換効率は、
温度だけを見るのではなく、
湿気が持っているエネルギーまで含めて、
空気が持っているエネルギー全体をどれくらいリサイクルできたか
を見る数字なんです。
これを専門用語では、
「エンタルピー」
といいます。
もう覚えなくてもいいです(笑)
温度のエネルギー+湿気のエネルギー =空気が持っているエネルギー全体
くらいで大丈夫です。
はい!では問題です。
温度交換効率80%!
湿度交換効率60%!
だったら、
全熱交換効率は?
80%と60%の真ん中だから、
70%!
……これ厳密には正解ではありません。
なぜなら、
温度のエネルギーと、
湿気が持っているエネルギーは、
単純に同じ割合で足し算できるものではないからです。
学校のテストで考えると分かりやすいかもしれません。
国語80点。
数学60点。
2教科とも100点満点のテストなら、平均70点です。
でも、
国語100点満点。
数学200点満点。
だったら?
単純に平均70点とはできませんよね。
全熱交換効率も少し似ています。
温度差がどのくらいあるのか。
水分量の差がどのくらいあるのか。
それぞれが持っているエネルギーをまとめて計算して、
「空気全体としてエネルギーを何%リサイクルできてる?」
を見るんです。
うーん。エネルギーってなんやねん。
この場合のエネルギーは、エアコンがしなきゃいけない仕事の量と思ってください。
夏をイメージしてください。
日本の夏は、めっちゃ湿ってます。
外から35℃の空気が入ってきたとき、
エアコンで温度だけ下げれば終わりではありません。
一緒に入ってきた湿気もエアコンで除湿してます。
だから外のドレーン管から水が流れてきますよね。
アレ空気の中にあった湿気です。
つまりエアコンからすると、
「暑さ」も仕事。
「湿気」も仕事。
です。
だから、
温度交換効率だけを見ると、
「おお!めっちゃ熱交換してる!」
と思っても、
湿気をほとんど交換できなければ、
夏のエアコンにはまだまだ仕事が残っています。
逆に、
温度だけでなく湿度まで交換できれば、
冷房の負担だけでなく、
除湿の負担も減らすことができます。
そこで、
温度と湿度をまとめて、
「空気のエネルギー全体としてどうなの?」
を見るのが、
全熱交換効率
です。
またまた、ここでも一つ注意。
全熱交換効率だけを見れば、全部分かる!
というわけでもありません。
同じ全熱交換効率でも、
温度と湿度がそれぞれどのくらい交換できているのかは、
製品によって違います。
なので僕としては、
温度交換効率
湿度交換効率
全熱交換効率
夏と冬の条件、全部わかるといいですね。
同じ換気設備でも、
夏と冬では温度や湿度の条件が違うので、
全熱交換効率も冷房時と暖房時で違います。
ヴェントサンは実は夏の方が少し効率が良くなります。
ここまで来ると、
カタログに、
「熱交換率80%!」
とだけ書いてあったら、
何の80%?
温度?
湿度?
全熱?
さらに前回の話を思い出せば、
それ、何㎥/hのとき?
まで気になってきたら、もう立派な換気マニアですね!(笑)
熱交換換気は、
換気しながら、
室内でせっかく作った快適さを
できるだけリサイクルする設備です。
温度だけを見るのが、「温度交換効率」。
湿度を見るのが、「湿度交換効率」。
そして、その両方のエネルギーをまとめて見るのが、「全熱交換効率」
です。
分かってみると、
そんなに難しくないですよね!
次回は……
ここまで温度、湿度、熱交換率と
いろいろな数字を見てきました。
じゃあ結局、
熱交換換気って、どれくらい電気代を減らせるの?
について考えてみたいと思います。
熱交換率90%なら、
電気代も90%OFF!?
お読みいただき、ありがとうございました!
改正でした。
※本記事は、ドイツinVENTer社の技術情報および日本の全熱交換器に関するJISの情報を参考に、日本の住宅事情に合わせて編集・解説しています。