換気すれば乾く、とは限らない
ドイツinVENTer社に学ぶ、住まいと換気の基礎知識 Vol.14
大切な換気の役割。湿気を外へ出してカビを予防し、室内を快適にしてくれる。
確かに、換気にはそういう役割があります。
でも実は、換気すれば乾く、とは限りません。
今回はドイツでよく問題になる「地下室」の話から考えてみたいと思います。
ドイツの地下室、夏に窓を開けるとどうなる?
ドイツの住宅には、半地下の地下室がある家が珍しくありません。
半地下なので夏でも比較的ひんやりしています。
ワイン置いたり、映画にありそうな家財道具を置いてたり秘密基地になっていたり。
そんな地下室が少しジメジメしていたら、
「窓を開けて風を通した方がいいんじゃない?」(半地下なので)
と思いますよね。
ところが真夏にこれをやると、逆に地下室を湿らせてしまうことがあります。
例えば外が、30℃70%で地下室が20℃。
真夏の外気は、たっぷり水分を持っています。
その暖かく湿った空気が、ひんやりした地下室へ入ってくる。
すると空気は冷やされます。
でも、持ってきた水分が消えるわけではありません。
その結果、相対湿度がどんどん上がる。
さらに壁や床の表面温度が低ければ、そこで結露することもあります。
つまり、「地下室が湿ってる!換気しよう!」
と一生懸命窓を開けた結果、外から湿気を運び込んでいた。
なんてことがあるんです。怖い~。
風を通すことと、乾かすことは同じじゃない
ここが今回のポイントです。
風を通すこと自体には意味があります。
家具の裏や部屋の隅など、空気が動かなかったところに風が通れば、表面付近の湿気が滞留しにくくなります。
でも、
その風がどんな空気なのか?
は別の話です。
乾いた空気を入れれば、乾きやすくなる。
湿った空気を入れれば、湿りやすくなる。
めちゃくちゃ当たり前なんですが、
「換気=湿気を出す」
と考えていると、この部分を忘れてしまいます。
日本なら、どこで起きる?
「でも日本の家、地下室なんてないよ!」
という方も多いでしょう。
確かにそうです。
でも、ドイツの地下室を日本の住宅に置き換えて考えると、結構身近な話になります。
例えば、
基礎断熱の床下。
夏でも床下は外気より温度が低いことがあります。
そこへ真夏の暖かく湿った外気を、どんどん入れたら?
ドイツの地下室と似たことが起こります。
もう一つは、
北側の納戸。
日射が入りにくく、温度が上がりにくい。
しかも荷物がいっぱい置いてあって、空気も動きにくい。
そこへ夏の湿った外気を入れる。
壁際や荷物の裏では、かなり高い湿度になるかもしれません。
他にも、
玄関土間。
コンクリートの床。
普段あまり使わない北側の部屋。
あと、エアコンでキンキンに冷やした部屋。
こういう、
「外より冷たい場所」
では同じ考え方ができます。
なのでドイツの、
「夏の地下室は換気に注意!」
という話は、
日本では、
「夏の床下や北側の冷たい場所に、湿った外気を入れて大丈夫?」
と読み替えると分かりやすいと思います。
湿度70%と湿度70%は同じじゃない
ここで大事なのが、相対湿度です。
例えば、
30℃・70%。
20℃・70%。
どちらも湿度計には、
「70%」
と表示されます。
でも空気中に入っている水分量は、全然違います。
30℃・70%の空気の方が、ずっとたくさんの水分を持っています。
なので外も70%、床下も70%。だけど同じではありません。
夏の湿気を考えるときは、
温度と湿度をセットで見る必要があります。
換気するべきかは、外と中を比べて決める
だから、「湿度が高いから換気!」
だけじゃなく外の空気と入れ替えたら、本当に良くなるのか?
例えば地下室や床下なら、外気の方が乾いている時間に換気する。
外の方が湿っているなら、むしろ入れない。
その日の天気や時間帯によっても変わります。
何度も言いますが換気って、適量を適切にです。
必要なときに、必要な空気を入れる。
そして日本の夏では、湿度交換が効いてくる
ここでまた熱交換換気の話です。
全熱交換換気なら夏、
外の空気を入れながら、湿気の一部をそのまま室内へ入れずに済みます。
以前お話しした、「外の湿気を入れすぎない」ですね。
日本の夏は、外気そのものがかなり湿っています。
なので、換気量だけを見るのではなく、入ってくる空気の湿気をどうするか。
ここまで含めて考えた方がいい。
そして前回のレンジフードの話も同じです。
レンジフードで大量に排気すれば、その分だけ外気が入ってきます。
冬なら冷たい外気。
夏なら、暑くて湿った外気。
エアコンは温度を下げるだけではなく、その湿気まで処理しないといけません。
だから夏は、熱交換率だけではなく、
湿度交換まで含めて考えることが大事 なんですね。
ということで、
今回覚えておいてほしいのは、
換気すれば乾く、とは限らない。
これです。
ドイツの地下室で起きていることを、日本の家に置き換えてみる。
基礎断熱の床下は?
北側の納戸は?
冷たい土間は?
そこへ入れている夏の外気、本当にその場所を乾かしているでしょうか?
それとも、
一生懸命、湿気を運び込んでいるでしょうか? 怖い~💦
換気って、
ただ空気を入れ替えるだけの設備なんですが、
考え始めるとなかなか奥が深いですね。
お読みいただき、ありがとうございました!
改正でした。
※地下室や床下の湿気は、換気だけでなく漏水、地盤からの水分、防水・断熱・気密などが原因となる場合もあります。
※本記事は、ドイツinVENTer社およびドイツの公的機関による公開情報を参考に、日本の住宅事情に合わせて編集・解説しています。