Vol.40 日本の家が高床なのは、洪水のため?
前回は、日本の木造住宅に
なぜ床下があるのかを
考えてみました。
木の床を地面から離し、
床下へ風を通して、
湿気を外へ逃がすためでした。
でも、そもそも日本は
なぜ床を高くしたのでしょう。
雨や洪水が多いから?
僕も最初は、
そう思っていました。
床を高くしておけば、
水が来ても床下で止まる。
……と思ったのですが、
主な理由は別にありました。
■45cmでは洪水に勝てない
現在の建築基準法施行令では、
最下階の居室の床が木造なら、
床の上面を地面から
45cm以上離すこと。
床下に換気口を
設けること。
これらが原則として
定められています。
しかし、45cmという高さは、
本格的な洪水から家を守るには
少し低すぎます。
条文の名前も、
「居室の床の高さ及び防湿方法」
です。
地面から発生する水蒸気で、
木の床が腐らないようにする。
そのために床を持ち上げ、
床下を換気する規定です。
床を高くした大きな理由は、
洪水よりも湿気だったんですね。
■昔の家も全部高床ではない
昔ながらの日本の民家には、
地面と同じ高さの
「土間」がありました。
玄関や炊事、農作業などに
使われていた場所です。
一方、人が座ったり、
寝たりする場所には、
木の床をつくり、
畳を敷きました。
こちらは地面から
少し高くなっています。
もし洪水だけが理由なら、
家全体を高くした方が
よさそうですよね。
でも実際には、
土間は地面の近く。
木や畳を使う生活空間だけ、
高くしていました。
濡らしたくない場所を、
地面から離した。
そう考えると、
床下の意味が見えてきます。
■木と畳を湿気から守る
日本の夏は、
気温も湿度も高くなります。
さらに昔は、
現在のような防湿シートや
鉄筋コンクリートもありません。
そこで、木の床を
地面から持ち上げる。
床下の周囲を開け、
自然の風を通す。
地面から上がった湿気を、
風に乗せて外へ逃がす。
とても単純ですが、
分かりやすい方法です。
木や畳の上で座り、
そのまま布団を敷いて寝る
日本の暮らしにとって、
床を乾いた状態に保つことは
大切だったんですね。
もちろん、床が高ければ
大雨による浅い浸水を
防ぎやすくなります。
ネズミや虫が入りにくくなり、
木材も点検しやすくなります。
洪水対策も、
まったく関係がない
わけではありません。
ただ、一番の目的は
木の床の防湿です。
■海外は洪水が少ないから?
では、海外で床下のない家が
建てられているのは、
洪水や湿気が少ないから
なのでしょうか。
そうとも限りません。
そもそも海外にも、
床下のある家や高床の家、
地下室のある家があります。
一方、床下をつくらず、
地面の上にコンクリートの
床版をつくる家もあります。
違うのは、
地面の湿気への対処方法です。
日本の昔ながらの家は、
「空間をつくり、
換気で湿気を逃がす」
床下のない家は、
「防湿層をつくり、
湿気を下で止める」
砕石、防湿シート、断熱材、
鉄筋コンクリートを重ね、
地面の水分が室内へ
上がらないようにします。
床下を換気しなくても、
別の方法で湿気を
処理しているんですね。
■寒い国には地下室もある
床下のつくりは、
湿度だけでは決まりません。
寒い地域では、
地面が凍って基礎を
持ち上げることがあります。
そのため、凍らない深さまで
基礎をつくる必要があります。
どうせ深く掘るなら、
地下室として利用しよう。
そんな地域もあります。
反対に、地面がそれほど
深く凍らない地域では、
床版を地面の近くにつくる方が
合理的な場合があります。
気候、地盤、材料、工事費、
地域の建築文化によって、
床版、床下、地下室が
使い分けられているんですね。
■床下がない方が洪水に強い?
床下がない家なら、
床下浸水は起こりません。
あたりまえやん(笑)
水や泥が見えない床下へ入り、
残り続けることもありません。
でも、床面が地面に近いと、
水が床の高さを超えた瞬間、
室内へ入ってきます。
洪水で大切なのは、
床下があるかどうかより、
屋外の地面に対して
室内の床がどれだけ高いかです。
一度、自宅の外へ出て、
地面と室内の床の高さを
比べてみてください。
床下点検口がどこにあるかも、
確認しておきましょう。
日本の家が高床なのは、
洪水が多いから。
半分は当たっています。
でも本当の主役は、
地面の湿気です。
木の床を地面から離し、
風を通して湿気を逃がす。
床下は、日本の木の家を
長持ちさせるためにつくられた、
昔ながらの換気設備でも
あったんですね。
次回は、
「床断熱と基礎断熱、
結局どう違う?」
を考えてみたいと思います。
どちらにも床下があるのに、
片方は屋外で、
片方は室内です。
また不思議な話ですね(笑)
お読みいただき、
ありがとうございました!
改正でした!