Vol.27 窓を開けずに、夜風で家を冷やせる?
前回、夜に窓を開けて涼める季節は、50年後には春と秋へ移動していきそうだという話を書きました。
でも現実には、外が涼しくても窓を開けられない家があります。
防犯。外がうるさい。花粉や虫。雨。
だから窓を閉めたまま換気扇を使って家を冷ましたい!そんなお話です。
ヴェントサンには、そのための「換気(ナイトパージ)モード」があります。
他の熱交換換気メーカーさんの製品にも切り替えできるものは多くあります。
よし、これを使えば窓を開けなくても家が冷える!
……と思ったのですが、計算してみると、そう簡単ではありませんでした。
■まず、熱交換を止める
例えば、室温が28℃、外気温が22℃だったとします。
外の方が6℃も涼しいので、その空気を家の中へ入れれば室温は下がりそうです。
ところが、温度交換率87%の熱交換モードで運転すると、22℃の外気は計算上約27℃まで暖められて入ってきます。
室内の環境をキープしようとするのが熱交換換気ですから。
冬なら、とてもありがたい仕組みですし、冷房中も外の暑い空気を冷やして入れてくれます。
でも、室内より外の方が涼しい夜は逆です。
せっかくの夜風を、わざわざ暖めてしまいます。
熱交換、めっちゃ仕事してる。
今は休んでくれ~(笑)
そこで使うのが、ナイトパージモードです。
通常は約70秒ごとに給気と排気を反転しますが、ナイトパージモードでは、一方を給気、もう一方を排気に固定します。
熱交換をせず、22℃の外気を涼しいまま取り込むわけです。
■でも、どれくらい冷える?
換気によって外へ逃がせる熱は、温度だけで考えると、
0.33×風量×室内外の温度差 で計算できます。
(「0.33」は、空気を1℃変えるのに必要な熱量から出てくる定数。いきなり謎の数字ですいません💦)
一般的な2階建ての戸建をイメージしてください。
床面積100㎡、天井高さ2.4mの家なら、室内の空気は約240㎥です。
毎時0.5回の換気をするとしたら毎時120㎥。
その場合に室内28℃、外気22℃なら、
0.33×120㎥×6℃(28-22)=約240W。これが換気で外に逃がせる熱。
240Wは、2~3人が自然に出す熱と同じくらいです。
……あれ? 家に2~3人いたら、それでトントンやん。
さらに冷蔵庫や照明、テレビなどの発熱もあります。
昼間に壁、床、天井、家具へたまった熱も、夜になって室内へ出てきます。
毎時120㎥程度の換気では、家を積極的に冷やすというより、
「室温が上がるのを少し抑える」くらいになりそうです。
■窓を開けると、なぜ涼しい?
では、もっと空気を動かしたらどうなるのでしょう。
室内外の温度差を6℃として計算すると、
| 1時間に動かす空気 | 換気回数 | 冷却能力 |
|---|---|---|
| 120㎥/h | 0.5回/h | 約240W |
| 480㎥/h | 2回/h | 約950W |
| 720㎥/h | 3回/h | 約1,430W |
| 1,200㎥/h | 5回/h | 約2,380W |
窓を2方向に開けて風が通れば、機械換気よりずっと多くの空気が動きます。
仮に1時間に家の空気が3回入れ替われば、約1,400W。
5回なら約2,400Wです。
もちろん、自然の風なので、いつも同じ量が流れるわけではありません。
それでも、窓を開けたときに室温がしっかり下がる理由は、単純に動いている空気の量が多いからでした。
■レンジフードくらい回さないとダメ?
窓を開けずに同じことをしようとすると、かなり大きな換気量が必要です。
毎時500~700㎥。
レンジフードの強運転に近い風量です。
室内外の温度差が6℃なら、
・毎時500㎥で約1,000W
・毎時700㎥で約1,400W
の熱を外へ逃がせます。
このくらいになると、人や家電から出る熱を上回り、壁や床へたまった熱も少しずつ減らせそうです。
では、夜になったらレンジフードを強運転すればいいのでしょうか。
出口があっても入り口が無いと入らないですよね。
■500㎥出すなら、500㎥入れなければならない
レンジフードで毎時500㎥を排気するなら、同じ量の外気が入る場所が必要です。
給気口が小さいまま排気だけ強くすると、
・家の中が強い負圧になる
・計算どおりの風量が出ない
・玄関ドアが重くなる
・意図しない場所から空気を吸う
・燃焼機器がある家では、排ガスを逆流させる危険がある
といった問題が起きます。
ヴェントサンの給気量が合計120~200㎥/hしかないのに、レンジフードで500㎥/h排気しても、給気が足りません。
ヴェントサンの穴からも吸い込めますが、ファンやセラミックの抵抗があるため、自由に500㎥入るわけではありません。
大切なのは、排気ファンの大きさだけではありません。
どこから500㎥入れて、どの部屋を通り、どこから500㎥出すのか。
空気の入口から出口まで、セットで考える必要があります。
■本気でナイトパージする家とは?
窓を開けずに家をしっかり冷やすなら、
・毎時500~700㎥程度の排気ファン
・反対側に、同じ量を取り込める給気口
・雨、虫、花粉、防犯への対策
・給気口から排気口までの室内通気経路
・外が暑くなったら停止する制御
が必要です。
レンジフードを利用するなら、同時給排型にするか、運転と連動して大きな給気口が開く仕組みが必要です。
家の反対側から涼しい空気を入れ、廊下や室内ドアの下を通し、レンジフードや専用ファンから排出する。
ここまで設計して、初めて窓を開けないナイトパージになります。
■では、ヴェントサンのナイトパージは意味がない?
意味がないわけではありません。
外が涼しいのに、熱交換して暖め直すより、涼しい空気をそのまま入れた方がよい。
夜の間に、人体や家電から出る熱を少しでも外へ逃がす。
家の温度上昇を抑え、翌朝まで熱をため込みにくくする。
その補助としては使えます。
ただ、「ナイトパージモードにすれば、窓を開けたときのように家が冷える」わけじゃない。
通常の換気量では、人の発熱とトントン。
家をしっかり冷やすには、レンジフード級の大風量と、それに見合う給気口が必要です。
そして今回の計算は、温度だけを見ています。
外の空気が室内より乾いていれば、湿気も一緒に外へ出せるため、実際の効果はさらに大きくなります。
反対に、外が涼しくても湿っていれば、室内へ湿気を持ち込んでしまいます。
■ナイトパージは、モードではなく設計
今回のお話の結論としては、ナイトパージは、コントローラーのボタンを押せばいいわけじゃない。
窓開けの代わりになる大風量が必要なら、家を設計するときから専用の給気と排気を考えましょう。
夜風を家の中へ通すにも、ちゃんと設備と設計が必要です。
お読みいただきありがとうございました。
改正でした!